人力検索はてなで『機動戦士ガンダム00』について質問してみた(3)

前回の続き。


先の質問(『機動戦士ガンダム00』の面白さがわかりません)で、いちばん示唆的かつ刺激的な回答をいただいた玖足さん(id:nuryouguda)と、こんなやりとりをした。
(以下、引用文は一部割愛。文責・春日)

stonedlove
「やっぱりこいつら(作り手)全員、馬鹿なんじゃないか?」というあまりにも恐ろしい疑問が頭をもたげるのを必死でこらえ、「いやまさか! そんなことがあるはずない」と思い直したりしながら『00』を見ているんですが、
どうやらこの作品は、2007〜8年現在の日本の現実を、(意図せざるところで)かなり反映してしまっているのではないか?
端的にいえば、『00』は狂っている。それは、時代の狂気を映し出しているのではないか?
それこそ、「かたわ少女」のように。
「世界の歪み」とは、わたしたち、いまの時代を生きる者たちの、認識の歪みではないのか?
『00』に欠けているもの、『00』が描けていないもの、それこそが、いまという時代を反映しているのではないか?
とか考えながら見ています。


nuryouguda
世界の歪みを正すと言うアニメだと大上段に振りかぶってるのが正しく歪みかもしれないって言うのはブラックなユーモアがありますね。意図的ならすごいです。Vガンダムの時の富野監督とか、ガンダムと関わったらちょっとどっかおかしくなるのかもしれないですね。


nuryouguda
今思いついたんですけど、描写がどぎつい割に痛みが感じられないのは、事件が突発的でそれ以前のドラマに関連してないから必然性がなく、人間らしさが感じられないからかも。「こういう流れだったら殺人をせざるを得ないな、自分もこういう状況だったらどうしよう」っていう皮膚感ですかね。
00の場合は「流れは関係ない。個性的で狂ってるキャラだから意味の無い殺人くらいする」っていう。
イデオンのドバは家族ケンカだけど、社会の中での家の体面って言う形の無いものとか、大きな物に押し潰されるようなどうしようもない感じもあって、それは悲しいんですよね。00では女王とか戦争被害者とかいう要素はあるんですけど、それがキャラクター個人の問題だけで、大きなものとか視聴者にも共通する社会性や人間本能に繋がっている感じがしないので、他人事っぽいんですよね。


stonedlove
一連のQ&Aのなかで直感的にアキバ殺人事件と『00』の世界観が結びついてしまったんですが、
なんとなくその連想は当たっているような……。恐ろしい予感がします。


機動戦士ガンダム00はとてもおもしろいかも - 玖足手帖(コメント欄)」

http://d.hatena.ne.jp/nuryouguda/20081124/1227526522


このやりとりの後、この記事で俺のコメントに全力でマジレスいただいた。

そうですね。満たされない人生の鬱憤を大きな所に一足飛びって言うのはあります。三島由紀夫レベルの犯行が自意識をこじらせた高学歴ワープアが模倣してますね。

(ちなみに、三島に関して、富野由悠季は「公人が殉ずるべき大義は国体などの大きな物よりも弱者や子供といった下位の存在であるべきだ」と看破してます)

あと、アキバ殺人事件と00の世界観の共通点はセブンソードニートが振り回す、と言うだけではない気がします。

先日、ガンダム00キチガイキャラの奇矯な振る舞いを本気にしないでネタだと思って嘲笑すると面白い、と書きました。ニコニコ動画で突っ込みを入れると面白いと。また、リア充の視聴者は僕のような現実の復讐としての理想の人間関係の模索をアニメに求める必要はなく、むしろ人間関係を忘れる遊びとしてアニメを見るのではないか?と。

戦争に巻き込まれた人が泣き喚いたり、気が狂った人が事件を起こすのを冷笑し、見下して楽しんでるのかな?と。

で、です。秋葉原連続殺傷事件現場を携帯電話で撮影したり、ネットでNEVADAたんやネオ麦茶などをキャラクターとして扱ったりという態度はガンダム00のトリッキーなキャラクター遊びに近いのではないか?などと感じたりもします。

まあ、僕はちょっと頭が病気なので、なんでも意図的に感じすぎで、杞憂でしょう。


機動戦士ガンダム00の狂気のサクラ - 玖足手帖」

http://d.hatena.ne.jp/nuryouguda/20081126/1227704774


人力検索は終了したが、いまのところ、玖足さんのこの記事が、俺にとって最高の回答です。
大満足! ありがとうございます。


最初の質問から、ずいぶん深いところまで掘り下げてしまった……。
しかも、なにか非常に恐ろしいものを掘り当ててしまった気がする。


とりあえず、現時点での結論。

機動戦士ガンダム00』は、時代の狂気を映し出している。

毎回キャラクター描写やストーリーにいちいち腹を立てながら、
だがしかし、どうしても目が離せないのは、そのせいだと確信した。
最後まで、刮目して見届けたい。