高山文彦『水平記 松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年』

水平記 松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年

水平記 松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年

「解放の父」、松本治一郎の伝記。
礼賛一辺倒ではなく史料批判に基づいた丁寧な検証がなされており、精読に値する労著。
松本治一郎に関しては大ざっぱな知識しかなかったので、大いに勉強になる。


「水平歌」の作詞者、柴田啓蔵と松本治一郎が出会ったくだりを読む。
柴田は筑豊の生まれだが、差別から逃れるために地元を離れ四国の高等学校に通い、冬休みを利用して松本に会いに帰ってきたのだ。
「水平歌(解放歌)」は子供の頃、部落解放同盟の集まりがあるたびにいつも歌っていた歌だが、もうかれこれ20年以上歌っていない。

ああ解放の旗たかく 水平線にひるがえり 光と使命荷いたつ 三百万の兄弟は 今や奴隷の鉄鎖断ち 自由のために戦わん
ああ友愛の熱き血を 結ぶわれらが団結の 力はやがて憂いなき 全人類の祝福を 飾る未来の建設に 殉義の星と輝かん(水平歌)


ベアテ・シロタ・ゴードン(日本国憲法の起草に関わった女性)と松本治一郎は出会っていたのか! ふたりの志の高さと美しさに打たれる。


アストル・ピアソラ『Libertango』を聴きながら、『水平記』を読み終えた。えもいえぬ深い感銘。しばし余韻に浸る。


大杉栄やこの『水平記』、満州ものやニューラテンクォーターなど、なぜかここんとこノンフィクションづいている。しばらく流れに任せていろいろ読んでみたい。