ジュリアン・コープの音楽について

Peggy Suicide

Peggy Suicide

前回は希代の日本ロック解説本『ジャップロック サンプラー』について書いたが、
そもそも俺は20年来のジュリアン・コープ・ファンなのだ。
そんなわけで、今回は彼の音楽の魅力について書いておきたい。


イギリスのロック・ミュージシャン、ジュリアン・コープの名前は、
80年代後半に『ロッキング・オン』とか『クロスビート』の読者だったらよく見かけたはずだ。
簡単に活動暦を追うと、


ネオ・サイケ(ティアドロップ・エクスプローズ)

徐々にポップ化(ソロ初期)

ポップ・スターとしてブレイク(『Saint Julian』・『My Nation Underground』)

ふたたびアングラ化(『Peggy Suicide』・『Jehovahkill』)

その後はポップとアングラを行き来する音楽性。ドゥーム/ストーナーのシーンにも接近。


という流れだ。
ポップ・ミュージックとしての完成度が高いのは『Saint Julian』『My Nation Underground』で、この頃は洋楽好きな日本の女の子もキャーキャー言ってたと思う。見た目もポップ・スター然としてるし。


音楽的にひとつのピークを迎えたのが『Peggy Suicide』。
LPは2枚組だけど、ねばっこいリズムとダークな音像にほどよいポップ・センスがかぶせられ、飽きずに何度も聴いた。


次作『Jehovahkill』では、彼の音楽の根底に流れるテーマである「西洋人の原罪」を徹底的に探求。音楽性もさらにダーク&ヘヴィになる。こちらも傑作。最近、CD2枚組のリマスター盤も出た。


『20 Mothers』(95年)『Interpreter』(96年)あたりのアルバムでは、ふたたびポップなメロディメーカーとしての才能を発揮している。
90年代中頃から、日本ではあまり話題にならなくなっていったけど、本国ではコンスタントに活動しているようだ。


最新作『Black Sheep』はまだ聴いてないけど、2005年の『Dark Orgasm』はストゥージズを思わせるドロドロしたヘヴィ・サイケ・ロックでじつにかっこよかった。
彼のサイトhttp://www.headheritage.co.uk/には、古今東西サイケデリック・ミュージックが集められているので、ぜひのぞいてみてほしい。




そういえば、書いているうちにこんなエピソードを思い出した。
88年にFMラジオの番組でジュリアン・コープを特集していて、
俺はその番組ではじめて彼の曲を聴いたんだ。
たしかパーソナリティは矢口清治で、ゲストは山川健一
『My Nation Underground』から何曲かかけながら、
インタビューも紹介してたんだけど、
最後の質問「日本のファンにメッセージをください」への答えがふるっていた……。


「Don’t trust me」
だって。

“World Shut Your Mouth”(『Saint Julian』収録)


“East Easy Rider”(『Peggy Suicide』収録)