ジュリアン・コープ『ジャップロック サンプラー』

さらっと読める内容ではないので躊躇してたんだけど、ようやく読み終えた。
この本すごいよ!
日本のロックの暗黒史が、ジュリアン・コープによって明らかに!


内田裕也とフラワーズ/フラワー・トラヴェリン・バンド、スピード・グルー&シンキ、ファー・イースト・ファミリー・バンド裸のラリーズJ.A.シーザーといった日本のサイケデリック/プロト・メタルに重点を置いて書かれているんだけど、このへんの音楽をきっちり語れるのって、日本でも湯浅学ぐらいしかいないんじゃないかな。
これだけの情報をまとまった分量で読める本は、いまほとんどないと思う。


さらにこの本が魅力的なのは、大野松雄小杉武久ら現代音楽家たちの動向や、ハイレッド・センターオノ・ヨーコら当時の前衛芸術家たちにも言及していること。
読み進んでいくうちに、いままで点と点だった断片的な知識が、一本の太い線につながってくるような快感がある。


希代のレコード蒐集家でもあるジュリアン・コープは、主にレコードから情報を得てこの本を書き上げたらしく、憶測や過剰な思い込みが先走ったのだろう、随所に事実誤認が見受けられる。
そのためおびただしい脚注がつけられており、なかでももっとも誤記が多いポリドールの折田育造氏などは、最後にインタビューで自分に関する間違いを訂正している。また、巻末には近田春夫マーティ・フリードマンの対談が付記されており、このジャンルに詳しくない読者へのフォローもちゃんと効いている。


あの時代にこれだけのフリークスがいてめちゃくちゃやってたんだなーと思うと、元気が出てくる。