大塚英志『物語論で読む村上春樹と宮崎駿 ――構造しかない日本』

村上春樹には「謎本」がいっぱい出回ってて、そういう凡百の謎本とこの本を比較するのは失礼なのは知ってるけど、あえていってしまえば究極の「謎本」だと思う。「みなさんいろいろ詮索してますけどね、話は単純。謎でもなんでもないの。これこれこういうことですよ。以上」ってな感じで、もう身も蓋もない。しかも書き手の妄想や思い入れが高じてあることないこと書き散らす謎本と違い、いちいち正確な引用と指摘が憎らしいほどビシビシ決まっている。批評家であり物語作者でもある大塚英志の面目躍如といったところ。
村上春樹宮崎駿についての論考を展開しながら最終的にはいまの日本社会とがっちり組み合い立ち向かっている。ひさびさに批評を読んで興奮した。