ジャズ喫茶〈ジャマイカ〉

MODERN JAZZ  SINCE 1961  JAMAICA

かねがね来てみたかったジャマイカに初訪問。
入店時にかかっていたのはドン・フリードマン・トリオの『The Days Of Wine And Roses』。

ものの一瞬でわが家のようになじんでしまう居心地のいい空間。
ボンベイ・サファイアをロックでお願いします」

しばらくすると奥の席で談笑していた先客がいなくなり、客はカウンターの私だけに。
BGMがファラオ・サンダーズ"You've Got To Have Freedom"に切り替わる。
「この曲大好きなんです」とカウンターの淑女に話しかけると、「そうじゃないかなーと思って。ファラオは若い人にも人気あるでしょ」
んーワシはそんなに若くはないけど、そうよねー。
ジャイルズ・ピーターソンの『Jazz Juice』に入ってたよねーとか思い出す。

アシッド・ジャズ・ブームが来るちょい前にジャズにハマったので、ダンスフロア経由のジャズよりモダン・ジャズ史観からの影響が大きかったりするんですよ、私は。
ファラオ・サンダーズもスピリチュアルに行く前のコルトレーン・グループにいた爆裂ノイジーサックス奏者としての印象が強かった。『Live at Village Vanguard Again!』とか『Live in Japan』とか。
油井正一の『ジャズ』(新潮文庫)が座右の一冊なんです。
バンク・ジョンソン、ビックス・バイダーベックデューク・エリントン、アンドリュー・ヒルセシル・テイラーブロッサム・ディアリー……
ビ・バップ、ハード・バップ、スウィング、ディキシー、新主流派、ヴォーカル、フリー、フュージョンまで、ぜんぶ聴いてやろうという意気込みで新宿ディスクユニオン高田馬場〈DISC FUN〉を徘徊していたものだった。

そんなことを思い出しながら店内を眺めていると、びっしり詰まったレコード棚からおもむろにエリック・ドルフィーの『Last Date』が取り出されるのが目に入り、「うわ! ドルフィー好きなんです。なんでわかったんですか?」と尋ねると、「そうじゃないかなーと思って」と静かに微笑む淑女。
うおおお。なんという鋭い人相見。
ボウモアをロックでお願いします」

ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセンのベースがブンブン響く。
最後にドルフィーがつぶやく"When you hear music, after it's over, it's gone in the air. You can never capture it again"がいいのよねーなんて話をしながら、『remix』の小泉雅史さんもこの一節が好きだったなーと思い出す。
小泉さんの家で聴いたデレク・ベイリー、高円寺の図書館で読んだ清水俊彦『ジャズ・アヴァンギャルド』……
インプロヴィゼーションがほとばしる『Live At Five Spot』や複雑に組み立てられたパズルのような『Out To Lunch』もいいんだけど、個人的にいちばん好きなのはインド音楽無伴奏ソロが並ぶ未発表曲集『Other Aspects』だったりする。

幸い他の客もいないのでなにかリクエストしたいとひらめき、「ジョン・コルトレーンの"India"を。長い曲なんでほかのお客さんが入ってきて雰囲気が合わなかったら途中で止めていいです」

レコードのスクラッチノイズから立ち上がってくるエルヴィン・ジョーンズのシンバルワークとジミー・ギャリソンのコード弾き。コルトレーンドルフィーがハモるリフ。トレーンがソプラノで空中に敷きつめた音の波紋に切り込むように入ってくるドルフィーバスクラリネット。クーッこのバスクラがゾクゾクするのよねー。
ラフロイグ、ロックで」

ちょうどA面が終わった頃に現れた常連のナイスガイはアート・ペッパー好きで、ジャマイカの最高のセッティングで聴くペッパーがこれまたイイ!
すぐに意気投合し、彼がボトルキープしていたジャック・ダニエルズをご相伴にあずかって乾杯。ジャズの神様に献杯

いやー飲んだ。痛飲した。
ひさしぶりにかなり酩酊というか泥酔してしまったけど、ストレスが雲散霧消しました。

Don Friedman Trio - The Day of Wine and Roses

open.spotify.comPharaoh Sanders - Africa

open.spotify.comEric Dolphy - Last Date

open.spotify.comJohn Coltrane - Impressions

open.spotify.comArt Pepper - Friday Night At Village Vanguard

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