ジョン・ルイス『Orchestra U.S.A.』

THE DEBUT RECORDING

THE DEBUT RECORDING

ジョン・ルイス『Orchestra U.S.A.』。全体的なテーマやコンセプトはモダン・ジャズ・カルテット『Django』あたりとさほど変わりはないが、重厚なオーケストラの導入で受ける印象はガラリと異なる。水彩と油彩の違いというか。
ジョン・ルイスオーネット・コールマンの才能をいちはやく見いだした。モダン・ジャズ史観から見るとMJQのリーダーとしての功績以外は「クラシックかぶれの変な人」みたいな評価が多い印象があるが、この人の音楽を理解するには、もっと別の評価軸が必要な気がする。
あ、でも、ビル・エヴァンスキース・ジャレットが好きな人はフツーに聴いてるのかな、ジョン・ルイス。俺の周りにそういう人がいないだけで。
ジョン・ルイスとガンサー・シュラーが提唱した「サード・ストリーム・ミュージック」についても詳しく知りたい。ちょっとこのへん追っかけてみようかな。


Lonely Woman

Lonely Woman

モダン・ジャズ・カルテット『Lonely Woman』。ぬごごごご。猛烈に、寒気がするほどクール&ヘヴィ。3年前に禁煙したけどこれ聴いてると思いっきり深々と紫煙を吸引したい衝動に駆られる。
パーシー・ヒースのベースがぶんぶんうなる録音も最高。MJQでベースが小さくてがっかりしたのなんだっけ? 『Fontessa』かな。
若い頃はなんだかお上品すぎていまいち好きになれなかったモダン・ジャズ・カルテットに本格的にハマりそうな41歳。音楽があると人生楽しいねえ。
思えば、ミルト・ジャクソンを初めて知ったのは『美味しんぼ』だった……。


マトリックス&フューチャーバウンド『Worldwide 001』。通勤ラッシュの山手線をロンドンのチューブに見立てるライフハックマトリックスもフューチャーバウンドも昔は暗くて抽象的な作風だったが、近年は娯楽性を重視するスタイルにシフト。過去に培った技術をフルに活用していて好感がもてる。バリバリのハードSFを書ける作家がスペースオペラを書いたらこうなるって感じ。


THE××ズ (ザ・チョメチョメズ) 「あたしゃ人間」

クソヤバい。


■雑記
※『remix』編集部時代、ショウ・ブラザーズとジミー・ウォングのDVDのプロモーションに来たレコード会社の担当者に、カンフー映画とヒップ・ホップのつながりについて大いに力説して、驚かれたり喜ばれたりしたことがあった。
そういった意味でも、ジェイデン・スミスジャッキー・チェンの『The Karate Kid』は感慨深かったな。
ウータン・クランがショウ・ブラザーズに多大な影響を受けたのは、地元のローカルTV局が買付価格の安い香港映画をしょっちゅう流していたからなんだよね。なんかいまの韓流にもつながるものがあるな。


※DJがレコードの速度を微調整するときは大抵ターンテーブルのホイールや盤面に触れるんだけど、ファビオはそれやるかわりにレーベル面をクルクルッとやさしく撫でるの。すごくセクシー。


※「キャラヴァン」ってカンタベリーのバンドがすでにいるのに同名でデビューした日本人アーティストがいて、なんとなく反感を覚えたので聴いてない。いい音楽やってるかもしれないんだけど、「先人への敬意が足りない」って思っちゃうんだよね。


ジミ・ヘンドリックスのカヴァーで俺が好きなのは、リッキー・リー・ジョーンズの"Up from the Skies"と、カエターノ&ジルベルト・ジルの"Wait Until Tomorrow"。

ZZトップ『Antenna』

ANTENNA

ANTENNA

ZZトップといえばヒゲにグラサンのオヤジどもといった印象が強いが、じつはかなりクレバーな連中だと思う。とくにビリー・ギボンズ(vo/g)。
テキサス出身のビリー・ギボンズはサイケ・バンド上がりでジミ・ヘンドリックスから多大な影響を受けたブルージーなロック・ギタリストだけど流行にも敏感。テクノロジーの導入に貪欲なのは『Eliminator』『Afterburner』の大ヒットにも現れているが、近年は下手なストーナー・バンドがたまげるほどヘヴィなギター・サウンドを聴かせてくれる。
最近のインタビュー見たらビリーはカイアスやQOTSASUNN O)))、あとデペッシュ・モードやフリップ&イーノも好きなんだって! わかるわー。MTV時代のロートルかと思いきや、ちゃんと時代にあわせてアップデートしてるんですね。ちょっとありえないほどセンスが若い。
「Stages」がヒットしたとき(1985年)、『夜のヒットスタジオ』に中継で出演したZZトップ。完全口パク&あからさまにやる気のないアクション。衝撃だった。『夜ヒット』の外タレ枠でHR/HMのバンドが出演したときは、そりゃもううれしかった。ラットとかY&Tとか録画して何度も見てたけど、ZZトップはすぐ消した(笑)。


One Life to Live

One Life to Live

フィリス・ディロン、当時の〈トレジャー・アイル〉の作品のなかでも異色なんだよね。外向きというかクロスオーヴァー志向で、洗練度が高い。カーペンターズ「Close to You」のカヴァーがすごくいい。


■雑記
※宮島にて。

80年代の「ファンシー」が昨今の「萌え」にシフトしたと見るのが大筋としては妥当なんだろうな。その深層が気になる。


榎本俊二が描く「ブス」には、なんとも形容しがたい断絶と絶望とユーモアが漂っている。漫☆画太郎のそれとも発想は近いが、着地点はかなり異なる。


東京電力の最近の動向がカルトすぎる。死人を指して平然と「生きてます」と言い放ったライフスペースなんかにも通じる不気味さがあるよな。


※しまじろうの歌をもじって「やる気〜 元気〜 井脇〜♪」と歌ってたら妻に睨まれた。


※『電人ザボーガー』第5話。シブい巨大石仏の前で戦う大門。ロケ地どこだ? いま調べたら横須賀・鷹取山弥勒菩薩像らしい。聖地巡礼してみたいなー。
あーあ、仏像ブッ壊しちゃったよ、ザボーガー……。


※なぜ業界人は"teaser"を「ティザー」っていうんだろうね。"tease"するんだから「ティーザー」じゃないの?

ティーザー」もう一発。

きゃりーぱみゅぱみゅ『もしもし原宿』

もしもし原宿(通常盤)

もしもし原宿(通常盤)

きゃりーぱみゅぱみゅ『もしもし原宿』聴いてる。すげえ! なにこれ最高。いろんな条件と要素とタイミングと偶然があわさって、ちっちゃなミラクルが生まれてる。
中田ヤスタカ、水を得た魚のようだねえ。Perfumeの「ポリリズム」「チョコレイト・ディスコ」あたりとそっくりだと揶揄する向きもあるようだが、堂々と自己模倣できるのは才人の証。横山宏とかそうじゃん。
きゃりーぱみゅぱみゅ」って聞くと「キャリーラボ」を思い出すマイコン世代。あと「ちゃっくんぽっぷ」とか連想してしまう。
「PONPONPON」のPVを見せると「こわい! やめて!」というちびすけ(3歳)。


Undercover

Undercover

ビル・ワイマンのベースって聴けば聴くほどおもしろい。ヘンだけど絶妙にバンドにハマるフレージングとタイミング。


■ああ娘
※腰痛に悩む妻を見て「ぼくも、こちが、いたいのよ!」という娘。しかし私は知っている。君が訴えているのは「腰痛」ではなく「便意」だということを。彼女が押さえているのは「腰」ではなく「腹」だ。


※パンを口にくわえた娘に見送られた。きみはまんがか。


※「とーちゃん、これきって!」とハサミを差し出す娘。ちゃんと柄の方をこっちに向けている。いつ覚えたんだ?


※「ムーミンはね、ムーミントロールっていう妖精なんだよ」と私が言うと「ちがうよ! かばだよ!」と反論する娘(´・ω・`)


※『忍たま乱太郎』の影響で忍者になりたい願望を募らせている娘、妻に折り紙で手裏剣を作るよう頼み込み、「やりたいこと、めそめそして♪」と歌っている。歌詞の順番が違うと思う。


※ちびすけ、ボクっ娘卒業宣言。「だって、“わたち”のほうがかわいいでちょ?」とのこと。保育園の友達の影響もあるんだろうなあ。なんかちょっとさびしい。


※酔っ払って紙ヒコーキ折ってたんだけど途中で気が変わってテキトーに作った「イカちゃん」。
娘はいたく気に入った模様。なんでアウーな表情なのかは不明。

ミスティカ・トライブ「Meditation Stick」

Meditation Stick

Meditation Stick

俺の後輩で、ここ10年ぐらいずーっと地道にハウスやダブを作り続けてきたTakafumi Nodaという男がおりまして、このたびMystica Tribe名義でオランダのSD Recordsというレーベルからめでたくレコード・デビューを果たしました。超遅咲きの努力型。その実力は俺が太鼓判を押します。
http://soundcloud.com/sdrecords/sets/mystica-tribe-meditation-stick/
しずしずと展開する激シブ・ダブ。ぜひ聴いてみてください。


Best Dressed Chicken in Town

Best Dressed Chicken in Town

Dr.アリマンタド『Best Dressed Chicken In Town』。70年代DJ/ダブの名盤。Uロイとかビッグ・ユースとか好きだったら一発で気に入ると思う。このアルバムはとくにジャケが秀逸。チャック全開をよしとする、この美意識たるやいかに。


ゴールデン☆ベスト

ゴールデン☆ベスト

一世風靡セピアゴールデン☆ベスト。聴こうかどうかずいぶん迷った。80年代のプロダクションには興味があるが、とにかく歌がひどい。70分も聴き続ける自信がない。1曲目「前略、道の上より」ですでにくじけそうだ……。
なんとか思い直して聴いてみると、当時出ていたジャッキー・チェンJAC関連のレコードにも通じる「男らしさ」「カッコよさ」を演出するギミックてんこ盛りで予想以上に楽しめた。DX-7活躍しまくり。
ところでももいろクローバーZの「天手力男」って曲、もしかして一世風靡セピアへのオマージュじゃないの!?


■マズ麺、ほかメシネタ
エースコックCoCo壱番屋 カレーラーメンを食べてみた。

感想:激しくビミョー。これでは日清に勝てまい。


「日清焼きそば沖縄タコライス風U.F.O.BIG」
「沖縄の名物料理タコライスと焼きそばの融合!」という得体のしれないコピーにつられてつい買ってしまった。

感想:(゜д゜)マズウマー また食べたいとは思わん。


※このブログでも何度か触れている伝説のラーメン屋、高円寺『タンタン』の思い出。学生時代は昼過ぎに起きてしばらくメシ我慢して5時にタンタン大盛り(無料)、酒飲んでレコード聴いて本読んで明け方にタンタン、という生活をしていた。かれこれ20年以上前の話。


※もちもちパン嫌いヽ(`Д´)ノフツーのにして!

MAKOTO「Tower of Love」

前回の日記(DJやるよ! - Stoned Love)の続き。
下北沢の〈Side Trip〉という店でひさしぶりにDJしてたら、明らかに一見さんっぽい、ちょっとロードサイドっぽい風貌の女の子3人組がきて「この子、今度結婚するんです。なんかかけてください」って言うのよ。DJはそういうことをしてくれるもんだって信じて疑わない感じ。
迷わずマーク・アンソニージェニファー・ロペス「Escapemonos」をチョイス。

一瞬で店じゅうがお祝いムードに包まれた。
みんな最高、オレ最高。「DJってサービス業だよなあ」ってつくづく思った。


あと、そんとき初めてかけたマコトの「Tower of Love」は最強にフロア映えすることを確認。

iTunesで買ったしYouTubeでも聴けるけど、ひさしぶりにヴァイナルほしい衝動に駆られて〈DISC SHOP ZERO〉で12インチ買った。
ノーザン・ソウル! これモッズの人たちにぜひ聴いてほしいなあ。


そして今日は待望のアルバム『Souled Out』の発売日。超楽しみ!

SOULED OUT

SOULED OUT

DJやるよ!

サウンドファインダーの新川君([twitter:@soundfinder])のお誘いで、9/8(木)、下北沢のバー〈Side Trip〉にてDJします。
場所は南口商店街を下ったところ。いろは堂の並びというか「かどまえ」の裏側というかココイチの向かいというか、あのへんです。
回す時間は21時以降に30分ぐらいということなので、「踊る」というよりは「ミーノの伴」っつー感じで、軽いノリでやろうと思います。
気が向いたらお気軽にどうぞ。乾杯しましょう!

ピーター・トッシュ『解禁せよ』『平等の権利』(レガシー・エディション)

解禁せよ(レガシー・エディション)

解禁せよ(レガシー・エディション)

平等の権利(レガシー・エディション)

平等の権利(レガシー・エディション)

ふだんリマスター盤やアニバーサリー盤にはあまり興味がないのだが、このリイシューには感服した。
76年の『解禁せよ(Legalize It)』、77年の『平等の権利(Equal Lights)』、ともにレゲエ史上のみならず音楽史上に残る名盤だが、なぜ彼がこの時期にここまで完成度の高い作品を作ることができたのか? 多数追加収録されたボーナス・トラックのデモ・ヴァージョンや未発表ヴァージョンを聴くと、その過程が手に取るように理解できる。
ハービー・ミラー、大石始の両氏によるライナーノーツも読みごたえ十分。「Steppin' Razor」のイントロのドラム・パターン(チッチキチキチー・チリチキチキチー)は、スライ・ダンバーがアイザック・ヘイズの「Shaft」に触発されて考案したそうだ。このへんの誕生秘話っぽいエピソードも、じつに興味深い。

【特集】 ピーター・トッシュ|HMV ONLINE

http://www.hmv.co.jp/news/article/1106230045/


そんなことを考えているうちに、以前『remix』2004年10月号に掲載した、ピーター・トッシュにまつわるテキストを発見したので再掲する。

「俺は歩くカミソリ。気をつけな、怪我するぜ」 ピーター・トッシュの伝記映画がDVDに

 8月6日(金)、広島原爆記念日。8時15分に黙祷して家を出る。夕方、仕事の用事で下北沢へ。最近この街の雑貨屋や古着屋では軒並みレゲエやスカ、ロック・ステディがかかっている。レゲエ好きとしては単純にうれしいのだが、どこか一抹の物足りなさを覚える。理由は自分にもよくわからない。
 92年に公開されたピーター・トッシュの伝記映画『Stepping Razor Red X』がDVD化された(アップリンクより発売中)。87年9月11日、ピーター・トッシュは自宅に侵入した3人の賊に拳銃で頭を撃たれて死んだ。犯人のなかにはピーターの顔見知りもいたという。なぜ殺されたのか、誰が命令したのか。事件の真相はいまだによくわかっていない。
 44年生まれのピーター・トッシュは、キングストンのゲットー、通称「トレンチ・タウン」でその少年時代を過ごした。札つきのルード・ボーイとして鳴らした彼は、不良仲間のボブ・マーリー、バニー・ウェイラーとコーラス・グループ、ザ・ウェイラーズを結成する。R&Bやドゥー・ワップを愛する3人のコーラスと、当時生まれた新しいダンス・ビート、スカの強力な組みあわせでヒット曲を連発したウェイラーズは、その後ロック・ステディ〜レゲエへと音楽性を移行しながらラスタファリアニズムへの傾倒を深め、名実ともにジャマイカを代表するレゲエ・グループへと成長していく。ドスの効いたトッシュのバリトン、天に昇るようなバニーのファルセットがボブのリードとあわさる初期ウェイラーズのサウンドがいかに奇跡的なものだったかは、レゲエ・ファンなら誰でもごぞんじだろう。
 75年にウェイラーズを脱退したピーター・トッシュは、翌年、アルバム『解禁せよ』でソロ・デビューする。任侠肌の硬骨漢であり、「ステッピング・レイザー(歩くカミソリ)」の異名をもつピーター・トッシュのレゲエは、正義と自由と平等を主張する力強い歌詞とバンド・サウンドで世界中の人々を熱狂の渦に巻きこんでいった。
 83年から死の直前まで、ピーター・トッシュは自叙伝的な口述をカセット・テープに録音していた。映画『Stepping Razor Red X』は、死後3年目に発見されたこのテープをもとに制作されている。劇中では私生児として生まれた彼のふた親(とおぼしき人物)や、僚友スライ・ダンバー、アール・チナ・スミスらの証言に加え、ウェイラーズやソロ時代のライヴ映像をまじえながら彼の生涯が描かれている。
 生前の彼が「Red X」と名づけたテープのなかで、ピーター・トッシュは、少年時代に有刺鉄線に激突して失明しかけたという事故について語っている。彼はその理由を「悪霊のしわざ」だといい、このとき以来、つねに悪霊にさいなまれていたともいっている。ピーター・トッシュの生涯は、いわばこの悪霊との闘いの連続だった。
 もしもピーター・トッシュが生きていたら、「いまの世界は悪霊に支配されている」というはずだ。この国にもいたるところに悪霊が取り憑いている。ボンボ・クラット! 俺はそいつの正体を暴いてやる。そのためにピーター・トッシュを聴く。『解禁せよ』を、『平等の権利』を、『核戦争反対』を聴く。(春日正信)