日本人のリズム感は良くなったのか?

(初出:『remix』2002年12月号 春日正信コラム『Stoned Love』より)


 ある日、テレビの音楽番組で観客が手拍子してるのをボケ~っと聴きながら、「そういえば俺が子供の頃は、大半の日本人が1・3拍で手拍子を入れてたのに、いまは2・4で叩くのが当たり前になったなあ」と気付いた。一般的には「日本人のリズム感はここ10数年で大きく向上した」なんて言われてるけど、実際のところは果たしてどうなんだろう。1・3拍から2・4拍へ変化したことが、果たしてそんなに良いことなんだろうか?


 そういえば80年代に、アイドル歌手がミディアム・スローの曲を歌う時、バスドラに合わせて「ぱん・ぱぱん」って手を叩くのが流行ったなあ。あれは妙に恥ずかしかったけど、思えばあれが、従来の日本人のリズムと洋楽的なリズムがギリギリで拮抗していた最後の時代だったのかもしれない。いまや2・4で手拍子するのは当たり前になり、本来1・3拍でリズムを取るべき演歌系の曲にまで2・4で入れてしまうという妙な逆転現象が起こっている。


 どうもおかしい。それで本当に「日本人のリズム感は良くなった」といえるんだろうか。「2・4はかっこよくて1・3はかっこ悪い」という風潮は、いつの間にできあがってしまったんだろう。長きにわたってメディアによる「洋楽っぽいリズムはかっこいい」という、洗脳といえば大げさだが教育がなされた結果、あたかも2・4が自然であるかのように思い込まされているだけで、それで日本人のリズムが豊かになったり自由になったわけではまったくないと思う。


 余談だが、日本人のリズム感と洋楽のそれが異なることを説明するのによく引き合いに出されるのが、ディープ・パープルの『ライヴ・イン・ジャパン』に収録された“スモーク・オン・ザ・ウォーター”なんだけど、「イントロで観客が1・3拍で手拍子してるのを聴いたリッチー・ブラックモアが、その手拍子を2・4で取って弾き直した」といわれる部分を何度も聴いてみたんだけど、別に拍子が裏返ってるわけでもないし、何度聴いても違いがよく分からない。「あんた耳悪いんじゃん。こういうことだよ」という人は教えてください。

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20年前にこんなこと考えてたんだー、俺。
あんまり進歩してないなあ……

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